レーティングの説明

レーティングの算出にはGlicko-2 レーティングシステムを使用している．Glicko-2の詳細はここでは省略する．
レーティング(ランキング)は，日本棋士国内レーティング(ランキング)，世界棋士レーティング(ランキング)としてそれぞれ別に計算しており，前者は日本棋士同士の対局結果のみを反映した日本棋士のみの等級付けであり，後者は全世界の対局結果，棋士を対象としている．
日本棋士の評価付けが複数あることは望ましくないが，国内に限定することで，日本棋士のみのより安定した評価を得たいので現状では2つに分離している．
ある年月のレーティング結果は，その先月までに行われた全対局結果を使用して計算される．
世界棋士レーティングでは，既存のレーティングシステムでは不十分と考え，Glicko-2による計算に加えて，適宜，各国集団間の点数補正をしている．つまり，計算の1ステップ(3ヵ月)ごとに，各国棋士集団間の最近(約過去1年)の対局結果を見て，尤度が最大化される方向に集団内の棋士全体(最近の対局がある棋士のみ)のレーティング点数を一律に(補正上限ありで)増減させている．

日本棋士国内レーティングの計算には，日本棋院，関西棋院サイトより発表される対局結果(速報に載らないテレビ棋戦を含む)を用い，日本棋士同士の対局のみを対象とする．さらに外国で実施される対局でも，日本棋士同士のものは計算の対象とする．
世界棋士レーティングの計算には，主に日本棋院，関西棋院，韓国棋院，中国棋院，台湾棋院より発表される対局結果を対象としているが，その他の棋戦情報も含めることがある．
不戦勝(敗)は棋力に関係しないと考え，レーティング計算の対象外とする．計算に採用される対局はすべて同等とし，棋戦やラウンドによる重みづけは行わない．
対局データはプロ同士の対局のみを対象とし，基本的にアマチュア棋士との対局は含まない．ただし，後にプロになった棋士のアマチュア時代の対局を含むこともある．
関西棋院の対局データは2008年頃から充実する．それ以前のデータは日本棋院棋士のとの対局以外は乏しい．
テレビ棋戦の対局日が不明なものは放送日を対局日として反映させる．

そもそもは，棋士の棋力自体を推定するという統計学的な興味から始まっているため，ランキング表を作ることに特化した仕様ではない．レーティングの作成には理論値に近い勝率の分布が得られることを優先し，推定精度を落とすような対局のグレードによる重みづけを行わない．
ただし，実用上の観点から，レーティング値の変動の大きさについては，順位付けも意識した設計としており，特に，より上位の層の評価を優先して考えている．

対局者間のレーティング値の差と期待勝率の関係は(1)式に従い，表1のようになる．
これは，公平な対局条件(コミ数)を前提としている．対局の手番情報がある場合には，(2)式の補正点数を先番プレイヤーに加えることにより，対局条件の不平等に対応することができる．
レーティングの信頼度が低い(RDが特に大きい)場合は，点数差を小さく見積もって，期待勝率はこれよりも50%に近づくと考えられるが，詳細は省略する．

AのBに対する期待勝率＝1/{1+3^(Bのレーティング値 - Aのレーティング値)} ・・・(1)

補正点数＝0.74*(6.7-コミ数)/6.7 ・・・(2)